焚き火の音と、バイクのエンジン音。それさえあれば、僕の週末は完璧だった。
バイクに軍幕を積み、あえて不便を愉しむブッシュクラフト。そんな「自由」を求めて走り続けてきた僕に、ある日、驚くべき話が舞い込んできた。
「実は、親が代々受け継いできた山がある」
自分の山。それはキャンパーなら誰もが一度は夢見る、究極のプライベート・キャンプ場への切符だ。
「管理」の先にある、静寂と直火の居場所
これまでバイクで多くのキャンプ場を巡ってきた。 高規格なキャンプ場は快適で、そこにある安心感を否定するつもりはない。 けれど、どこへ行っても付いて回る「他者の生活感」に、どこか物足りなさを感じていたのも事実だ。
僕が求めているのは、管理された公園のような空間ではなく、もっと「自然味」に溢れた場所。
- 「静寂」の質: 他人の話し声や作業音に邪魔されず、ただ風の音と薪の爆ぜる音だけに耳を傾けたい。
- 「直火」という原点: 焚き火台という「道具」の上ではなく、地面の上で直接火を熾し、その熱を肌で感じたい。
- 「ワイルド」な手応え: 誰かが整えてくれた区画ではなく、自然そのままの地形の中で、自分の居場所を見つけ出したい。

景色が特別良いわけではないかもしれない。けれど、余計な雑音を排し、深い緑の中で焚き火と一対一で向き合う。その時間こそが、僕にとっての最高の贅沢なのだ。
親から受け継ぐ「何もない山」という現在地
そんな理想を抱く僕の前に現れた選択肢が、親が所有する「地元の山」だった。 代々受け継がれてきた場所だが、今はただ放置されているだけの、いわば「何もない山」だ。

所有権もまだ僕にはないし、正確な境界線や地形すら把握できていない。 何より家から距離があるため、通えるのは月に一度が限界だろう。 水道も電波もない、ただの山の斜面。 「キャンプ場」にするには程遠い現実がそこにはあるが、その「手付かずの状態」こそが、僕にとっては新しい旅の始まりのように思えた。
描き始めた、理想の「プライベート拠点」像
まだ具体的な計画ではないが、僕がこの山で実現したい「拠点」のイメージは、今の僕のスタイルをそのまま持ち込んだものだ。
- バイクと共にある時間: 愛車の存在を感じられる距離に停められる場所を作りたい。必ずしも乗り入れに固執はしないが、相棒であるバイクは近くに置いておきたい。
- 圧倒的なプライベート感: 誰からも見られず、誰の音も聞こえない。軍幕を張り、直火で調理をする。自分だけの秘められた隠れ家。
- 自然との知恵比べ: 獣や虫のリスク、荒れた地面。それらを排除するのではなく、どう対策し、どう共生していくか。その知恵を絞ることさえ、開拓の愉しみの一部だと考えている。

もちろん、これらはすべて今の僕の頭の中にある「妄想」でしかない。
実際の山がどんな表情をしているのか、バイクでどこまで近づけるのか、そもそも一晩を過ごせるような平坦な場所があるのかさえ、まだ分からない。
まずは3月中旬。 初めて本格的な現地調査へ向かう予定だ。
いきなり泊まれるような状態ではないだろうが、まずは自分の足で歩き、この山の「現在地」を確かめてきたいと思う。
――バイク一台、焚き火ひとつ。僕の本当の旅は、ここから始まる。


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